君はもしかして

庭に入ろうとしたその時、足元にどんぐりが転がった気がした。いや、風に吹かれた落ち葉が、アスファルトの上を滑っていったのかと。危うく蹴っ飛ばすところだった、その茶色のかたまりには細いしっぽがはえていた。

ええええええ???????

クヌギのどんぐりそっくりな小さなネズミだった。家の中にいた息子をささやくような大声で呼ぶ。息子が出てくるまでの時間、私の足元でちょろちょろ動いていたけれど、さして恐れている風もない。はじめて見た息子は即、一言「飼う?」
あまりの可愛さに息子に同意したい気もしたけれど、素性のわからない自然の生き物をかごなり箱なりに閉じ込めてしまうなんて、エゴ以外の何物でもない。

 

直接触れて人のにおいがカラダについてしまうとよくないので、ほうきでそ~っと庭の植物の中に追いやった。もうじき小学生の下校時間。ギャングたちに見つからないように。

調べるとどうやらカヤネズミらしい。うちの前の雑草が生い茂っていた休耕田が、今年は何か植えるらしく、きれいに刈られて耕されていた。そこに住んでいた子なのかもしれない。 我が家の植物たちには今、アブラムシが盛大につき、もうじきエゴノキが褐斑病になる季節がくる。消毒だの殺虫剤だの、ぶわゎ~っと撒きたい時期だけど、今年はやめておこう。